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議会通信 vol.96 2023年 秋号


 第5回定例会(9月1日~10月5日)が召集され、一般会計補正予算案、条例の改正、令和4年度決算に関する議案等、全56議案について審議しました。中でも、不登校特例校の設置に関する追加議案について、ご報告いたします。

不登校特例校の設置 検討費用の追加補正について…約981万円

 不登校の中学生を対象に特別な教育課程を編成し運営する不登校特例校を新規開設するための設置検討費用を追加するという議案です。教育委員会が行ったアンケート調査から不登校特例校のニーズが確認されたことから設置に向けた検討をすることになりました。

開校時期
2025年春
設置場所
早良区の市教育センター内
想定人数
40~60人を想定

まずは当事者の声を大切に!不登校特例校

議案質疑[9月1日] 田中 たかし(西区)

 2025年春の開校を目指して今年度から事業を進められるよう追加補正された「不登校特例校(中学校)の設置検討費用」について質問。不登校児の学びの場を確保するための措置ではあるものの、設置場所が福岡市教育センターでいいのか、1校でいいのか、小学生の不登校児はどうするのか、さらには「アンケート結果を元に設置を検討することとした」としながらもアンケート対象者が不登校児4,400人とその保護者にも関わらず回答数が児童生徒142人、保護者362人と少ない、本当に当事者の意見を把握できているのかなどの課題点を指摘、質問しました。学習カリキュラムは今後検討されることから、当事者の声に耳を傾けた学校となるよう強く要望しました。

豪雨災害を想定した防災対策の強化を!

一般質問[9月4日] 勝見 美代(西区)

 7月の豪雨は、福岡市内において河川の護岸崩壊や道路の冠水、雨水排水路での溢水、高齢者施設の床上浸水被害などをもたらしました。今回の被害に関する原因の調査と近年の豪雨に耐えうる雨水排水整備計画の検討等あらゆる状況を想定した対策を求め、市からは「被害があった箇所については詳細な調査を行い、浸水安全度向上のための効果的な対策を検討し実施する」との回答を得ました。
 特に高齢者施設については福祉避難所になることも考えられることから、令和6年4月までに求められている業務継続計画の策定の支援を強く要望しました。

小学校の生き物飼育の環境・体制の向上へ!

一般質問[9月5日] 小竹 りか(南区)

 小学校では、1・2年生の生活科の中で「生命の大切さ」を学ぶため、生き物を飼っていますが、適正な飼育でなければ、むしろ生命の軽視へとつながります。気候変化、アレルギー、教職員への負担等があるものの、教育長は、「生き物飼育は大きな意義があり、より充実した教育活動に取組む。」と答弁。暑さに弱いウサギが市内99校(全145校)で飼育され、他都市と比べ多いことから、防暑や大雨対策など福岡市獣医師会との連携の下、飼育環境・体制の向上にスピード感をもって取組むよう要望しましたが、現状把握のため各学校にアンケートを実施し、必要に応じ助言・指導するとの回答にとどまりました。

人工芝由来のマイクロプラスチック対策を

一般質問[9月5日] 前野 真実子(早良区)

 マイクロプラスチック(MP)は、海洋生物に限らず人体への影響も懸念されており、削減が必要です。発生原因として、最近注目されているのが人工芝で、民間企業が本市の河川調査をしたところ、多いところで、18%が人工芝由来とのこと。本市の市有施設には、人工芝のテニスコートがあり、そこから芝のチップが雨に流され、河川への流出することが発生源の一因として考えられます。対策として、不織布を使ったフィルターを側溝に取り付ける、劣化に強い人工芝を使う、などが有効です。本市としては、「国や県の動向を見守る」とのことでしたが、福岡市で取り組むべきだと訴え、福岡市独自の環境調査、対策、啓発活動を行うことを強く要望しました。

飲用水を購入するのはもったいない!

一般質問[9月6日] 井上 まい(城南区)

 福岡市は国の基準を大幅に超える水質基準をクリアした水道水を提供しています。以前に比べ、ミネラル分を残しながらもカルキ臭を抑えるための工夫もされ、水道局も積極的な飲用利用を勧めています。しかしながら、実際は水道水を直接飲用利用している割合は約28%と少なく、多くは浄水器経由での利用をしている他、ペットボトルの飲用水を購入する人が増加傾向であることも判明しました。要因として水道水に対するなんとなくの不安感があるものと仮定し、不安を払拭し、水道水をより飲んでいただくため、直結式給水(貯水槽を経由しない方式)の推進と、貯水槽式の建物であれば適正管理されていることを積極的に住民に伝えるための工夫を要望しました。

令和4年度 決算特別委員会 開会[9月15日(金)~10月4日(水)]

 一般会計の歳入は前年度比2.8%、歳出は3.1%減少。市税収入は過去最高額を更新し、実質収支は98億円の黒字となりました。
 一方で義務的経費(人件費、公債費、扶助費)は増加しており、財政の弾力性を示す経常収支比率は昨年度から3ポイント悪化し93.6%。少子高齢化、公共施設の老朽化も進み、一般財源の大幅な伸びは期待できず、社会保障関係費や公共施設等の改修・修繕に係る財政需要の増大が見込まれるため、歳入の積極的な確保を進める必要があります。

若者・LGBTQを誰一人取り残さない包括的支援を!

総会質疑[9月19日] 池田 良子(西区)

 近年、刑法犯の認知件数は減少傾向にある一方で、再犯者率は増加傾向にあります。2016年「再犯の防止等の推進に関する法律」が施行、本市においても2022年3月「再犯防止推進計画」が策定されました。計画の進捗状況を質すとともに、特に若者の再犯防止のための自立支援策として、住居の確保(市営住宅への単身者入居要件の見直し)や就労支援(更生のために就労の受け入れをする協力雇用主制度の拡充)、基礎的能力の習得指導等を求めました。また、LGBTQ当事者がありのままの姿で働き、自分らしく暮らせる社会となるように、LGBTQフレンドリー企業登録制度の周知や、あらゆる企業へLGBTQの理解促進ための啓発、研修、チラシ・ポスターの作成を求めました。

車いすスポーツのために体育館の開放を!

総会質疑[9月20日] 山田 ゆみこ(博多区)

 本市には障がい者のためのスポーツ施設が市内に1か所しかないため、「いつも埋まっていて施設確保が困難」という声がありました。新たなスポーツセンターの設置予定もないため、車いす利用者でも気軽にスポーツを楽しめるよう、市立小・中学校の体育館を利用できないか質問しました。学校や地域団体の利用を優先した上で、車いすスポーツで利用できる体育館をまずは各区に1校モデル校として開放することを提案し、併せて、一部の学校はバリアフリー化されていないため、まずは市として実態把握をするよう要望しました。
 体育館の開放については様々な課題もあることから前向きとはいかなかったものの、実態把握は行うとの答弁を得ました。

地域活動で全市域のバリアフリーを進めよう

総会質疑[9月21日] 近藤 里美(南区)

 本市のバリアフリーは、R3年改定の基本計画に基づきR7年度を目標年次として、千早・橋本・アイランドシティの3地区を追加した全22の重点整備地区で、優先的に進められています。重点地区以外は、道路の新設・改良と合わせて歩道のフラット化や側溝の蓋の改良がなされていますが、電動シルバーカー等の利用増もふまえ、地域活動の視点にバリアフリーを取り入れ、当該地区以外のバリアフリー化にも積極的に取り組まれるよう要望。また、障害者差別解消法の改正により来年4月からの事業者に対する合理的配慮の義務化を前提に、ハード・ソフト両面からのバリアフリー化に向け、所管局より市民や事業者に対し幅広く周知する旨の回答を得ました。

行政サービスを守れ! 技能労務職の活用を

総会質疑[10月3日] 田中 たかし(西区)

 福岡市の人件費の低さは他政令市比較で一番。これは技能労務職を民間委託や会計年度任用職員への対応に変更したことによります。その結果ごみ収集や学校などの現場で行政サービスが低下していると指摘。職員の合理化の必要性は認めつつ、契約通りに業務履行しない業者の存在も明らかにし、今まで技能労務職員が保っていたサービス水準が維持されるよう委託業者へのチェック体制の改善を要望。また、人事や財務の柔軟性によって無駄な業務を省き、業務運営上の工夫やICT化によって、職員一人あたりの生産性を高めることが本当の合理化であると述べ、削減ありきではなく、現場の実態に即した技能労務者の適正な配置と雇用制度の見直しを求めました。

昨年度の一般会計決算を認定せず

 我が会派は決算審査方針に基づき、総会質疑と各分科会等で決算審査に臨みましたが、令和4年度一般会計について不認定と判断しました。
 環境行政について本市は2040年カーボンニュートラルを目標に掲げているものの、温暖化対策関連予算の執行率が55.7%に過ぎず施策効果が十分といえないこと、子育て行政について、「子ども習い事応援事業」の利用率が非常に低かったことに加え、利用者の約8割が学習塾での利用となり、本来の事業目的である子どもの貧困対策として成果があったとは到底認められないことなどを理由として挙げ、令和4年度の一般会計歳入歳出決算を認定できないとの立場で討論し、決算議案に反対しました。