議会通信 vol.89 2022年 春号
代表質疑に向かう落石議員と、拍手で送り出す一同
【令和4年度予算が成立】
3月25日の福岡市議会本会議において、令和4年度予算が成立しました。
一般会計予算は令和3年度と同規模の1兆410億円(▲1.3%)で、特別会計・企業会計と合わせ、総額2兆857億円(▲3.3%)となりました。昨年12月に実施した「会派予算要望」に対し前進した施策もありますが、引き続き「基本政策」の実現に向けた政策提言ならびに要望を続けてまいります。同時に、令和4年度予算に対して、適正な執行が行われるよう注視していきます。
第1回定例会(2月16日~3月25日)が召集され、令和3年度補正予算案、令和4年度予算案、条例の制定・改正等、全86議案について審議しました。また、「ロシアによるウクライナ侵攻を非難する決議案」を全会一致で可決しました。
- オミクロン株の猛威による感染者の急増を踏まえ、保健所体制の強化と医療体制の維持、感染予防対策に、引き続き取り組むための予算を確保しました。
1.ワクチンの3回目接種への対応
①前倒し接種:対象者全員が2回目接種から6カ月間隔で - 接種可
②会場の工夫:週末(金・土曜)は21時まで時間を延長 - 集団接種会場では予約なしで接種可
③ワクチン選択:集団接種はモデルナ社、医療機関では - ファイザー社を使用
- ④対象者の拡大:5歳~11歳(市内50カ所の小児科での
- 接種をベース)
- 2.保健所体制の強化
コロナ感染者等からの相談対応の体制強化のため、市内の感染状況に応じて、各区の保健所に専門職の派遣を行なう。
3.自宅療養者への支援
・療養中の健康観察を行なうため、パルスオキシメータ―や体温計の貸与、入手が困難な場合の食料品等の配布を継続 - ・電話やSNS等を活用した健康観察業務の体制づくり(民間事業者に委託)
- ・訪問やオンライン診療等による医師の診断の充実に向けた支援を実施。
- 令和4年2月から、国により医療・介護・保育従事者の処遇改善が実施されることとなりました。これを受けて、福岡市でも保育所等の従事者を対象とした処遇改善(月額平均9,000円)を講ずるべく、約13億円の追加補正を実施しました。
保育士処遇改善、9000円賃上げとは限らない
議案質疑[2月16日] 田中 たかし(西区) 今回の処遇改善措置は民間の認可保育所、幼稚園、認定こども園等が対象。職種では保育士以外にも調理員や事務職員も含まれます。国の保育士配置基準に応じて補助金額が決定され、市から事業所に給付された後に給与に反映されることを確認しました。給付額は事業所の裁量に任されるとともに、質の高い保育を提供するために配置基準以上の保育士を雇用している事業所では一人あたりの給付額が減額となることから、政府が謳う「3%程度、約9,000円の賃上げ」が全ての保育士に給付されるとは限らないことを指摘しました。
同じ事業所内でも給付額に差が出ることから、今回の処遇改善策の内容について、市が事業所などに丁寧な説明をするよう要望しました。
TOPICS
「共創による地域活性化条例を策定!」
少子高齢化の進展や災害の激甚・頻発化などから、様々な分野で「共助」の重要性が改めて認識されています。一方で、市民の価値観や生活様式が多様化する中、地域コミュニティへの関心の低下や住民同士のつながりの希薄化が生じています。これらの現状を踏まえ、良好で持続可能な地域コミュニティづくりの取組みを進めていくにあたり、基本理念をはじめ、市民や町内会等の役割、市の責務を明らかにするべく、条例を制定しました。
基本理念
- 平時からの支え合いや助け合いにより生まれる安心感、顔の見える関係から生まれる豊かな暮らし及び自らの手による地域づくりという地域コミュニティの固有の価値を共有し、これを将来の世代へ継承していくこと。
- 市民等が地域コミュニティに関心を持ち、その一員として当該地域コミュニティの課題及び将来について考え、地域活動に取り組むこと。
- 市民等の多様性及び自主性が最大限に尊重されること。
◆市民税の増収と一般財源の確保
市税収入は3,455億円で、納税義務者数の増加に伴う個人市民税の増や、企業収益の増に伴う法人市民税の増、新築増改築の増加に伴う固定資産税の増など、令和3年度当初予算と比較すると289億円増の見込みです。
税収増に伴い自治体の基準財政収入額が影響する地方交付税等については615億円となり、昨年度比135億円の減額となる見込みとなっています。また、地方消費税交付金の増と財政調整基金の活用を合わせて、一般財源の総額については令和3年度を上回る額4,849億円を確保しました。
◆市債の発行と残高の推移
令和4年度の市債発行見込み額は、698億円で、令和3年度と比べ223億円の減額となります。市民一人あたりの市債残高(臨時財政対策債を除く)は約97万円で、昭和60年度以来37年ぶりに100万円を下回る見込みです。
◆コロナ対策経費に加え、子どもたちへの支援を強化
医療・介護関連の繰出金や負担金を加えた社会保障関係費は、引き続き増加を続け、令和3年度に比べ77億円の増となりました。そんな中、感染拡大防止と社会経済活動の両立に向けた取り組みを推進すべく、新型コロナウイルス感染症対応経費として総額2,193億円を確保するとともに、市民生活に様々な影響が拡がる中、特に困難な環境に置かれている子どもたちを支援するための施策を推進します。
具体的には、令和3年度と比較して、こども育成費は約56億円、教育費は約25億円増額し、新規事業に取り組みます。
●サポートを必要とする子どもたちのために
・1人1台端末を活用した様々な相談支援の実施
・ヤングケアラーを対象とした相談支援事業
・聴覚障がいのある児童生徒在籍の学校への補助装置の
導入
●安心して生み育てられる環境づくり
・ひとり親家庭の自立に向けた支援給付事業
・乳幼児健診情報のデジタル化
・妊婦健診の費用助成を拡充
●教育環境の充実
・公立夜間中学校「福岡きぼう中学校」を4月開校
・特別支援学校高等部(2校)新設に向けた開校準備
・介助アシストスーツの装備を該当学校に整備
●誰もが安心して暮らしやすいまち
・障がい者施設の工賃向上等の支援センターを設置
・福祉避難所の運営強化に向け物資を配備
・がん患者等へ医療用ウィッグや補装具等の費用助成
●健康づくり・介護予防の推進
・フレイルのリスクが高い方を対象とした予防支援
・Fitness City Project(フィットネス シティ
プロジェクト)~まちの中で自然と体を動かしたくなる
仕掛けの展開~
・データ分析結果を活用した健康づくり促進事業
・設置可能なすべてのバス停にベンチを設置
●地域コミュニティの活性化
・町内会活動支援事業を新設(活動費用の助成)
・市民センター等へのWi-Fi環境整備
●新たな価値を生み出すまち
・アーティストカフェの開設
・Fukuoka Wall Art Project(フクオカ ウォール
アート プロジェクト)(仮囲い活用アート)
・福岡eスポーツフェスタの開催
・人材交流拠点「エンジニアカフェ」の機能強化
●観光・MICEで賑わい、潤うまち
・魅力あるナイトコンテンツの創出
・修学旅行・バスツアー等による周遊観光の推進
・春吉橋迂回路橋を活用した水辺の公園利活用の検討
・世界水泳選手権福岡大会の開催準備
●豊かな自然を身近に感じられるまち
・油山市民の森&牧場のリニューアル
・志賀島・北﨑エリアの海辺を活かした観光振興事業
・海づり公園のリニューアルに向けた実施設計へ
・植物園内に一人一花拠点機能を強化
●未来に向けて挑戦するまち
・九大箱崎キャンパス跡地のまちづくり
・都心部の跡地のまちづくり(大名小・こども病院他)
・下水バイオガス水素ステーションの運営体制強化
・水素で動く大型モビリティやトラックの活用へ
●交流・人流・物流機能の強化
・地下鉄七隈線延伸事業(令和5年3月開通予定)
・西鉄天神大牟田線連続立体交差事業
(令和4年8月予定)
・生活交通の充実に向けたオンデマンド交通の社会実験
●カーボンニュートラルの推進
・再生可能エネルギー由来電力の利用促進
~庁舎、学校、上下水道施設など切り替え~
・次世代自動車の普及促進
・宅配ボックスの導入助成
・ゴミ指定袋へのバイオマスプラスチックの一部導入
変異を繰り返すコロナウイルス感染症への即応と福岡経済・雇用の維持回復策を質す!
代表質疑[3月2日] 落石 俊則(東区)
新型コロナウイルスの予期せぬ感染状況に対応するための保健所体制の強化とコロナ禍で傷ついた暮らしや経済の維持回復に向けた施策が不可欠であることから今後の対策を要望。市長から「ワクチン接種の促進とともに、感染動向に応じて機動的に対応できる保健所体制の強化に今後とも取り組む」、「失業・解雇については、オンライン合同会社説明会や就労相談窓口での支援の他、国や県との連携等により、相談体制の確保に努める」との答弁をえました。
さらに「会派基本政策2019」を基に、公共施設等のバリアフリーの拡充やあらゆる災害を見据えたまちの強靭化、地球温暖化対策の推進等、56項目の政策提案を行い、市政に反映されるよう質しました。
地域コミュニティ活性化推進計画の策定を!
補足質疑[3月4日] 池田 良子(西区)
参加者の固定化や担い手不足は町内会・自治会共通の課題。活動しやすい環境づくりや支援を求める地域からの多くの声に応え、福岡市共創による地域コミュニティ活性化条例案が提出されました。自治協議会や町内会、市民の役割をはじめ市の責務が示されたことを受け、市の地域支援策がどのように強化されるのかを質し、地域コミュニティの活性化に資する施策を総合的・計画的・段階的に展開すべく推進計画の策定を求めました。
福岡市は17年前から「市役所での就労経験を活かし民間企業への就労につなげる」ことを目的に、障がいのある人を対象とした就労制度を導入しています。本制度を通じた民間への就労移行等がますます拡大するよう求めました。
誰ひとり取り残さない行政サービスの実現へ
補足質疑[3月7日] 成瀬 穫美(南区)
2000年以降に成立した法律のうち、50本以上が地方自治体に相談窓口の設置を義務づけています。これからの行政サービスは、本格的なDX時代を迎える一方、職員の業務は専門的な知識や高いコミュニケーション能力を要する業務に特化されます。本市の多くの窓口で働く会計年度任用職員の処遇改善も含め、質の高い行政サービスを維持していくために、担い手育成に力をいれるよう強く求めました。
多様化・複雑化する女性の自立への支援について、全庁挙げての積極的な関わりとNPOや市民団体との連携や共働も含めた網羅的な取り組みを要望。また、コロナ禍の「密」の回避や環境負荷への配慮から急増した自転車の交通安全対策についても質問しました。
都心部への循環型LRT導入を検討せよ!
総会質疑[3月18日] 田中 しんすけ(中央区)
自動車交通量の増加による全市的な交通渋滞を解消するため、抜本的な駐車政策の転換やバス路線の再編・効率化、シェアサイクルの更なる拡充を求める一方で、「将来的には、天神~博多~ウォーターフロント地区をつなぐ都心循環型のLRT(次世代型路面電車)の導入を検討すべき」と提案しました。
これに対して市長は「車線の減少で既に混雑している道路交通へ更なる負荷をかけるなど、(LRT導入には)様々な課題がある」と、現時点では慎重な姿勢を示しました。引き続き、都心へ流入する自動車の量を減らすための施策を提案しながら、人と環境に優しい公共交通として再評価されているLRTの導入実現に向けた検討を重ねていきます。
保育現場の環境改善と休日保育の拡充求む
総会質疑[3月22日] ついちはら 陽子(東区)
2021年の国内の出生数は84万2897人で、6年連続の過去最少となりました。急速な少子化が進む一方で、女性の就業者数の増加に伴い、保育の必要性はますます高まっていることから、改めて保育環境の改善を提案。正規保育士の平均勤続年数は、全国7.7年に対し福岡市は6年。保育の職場が多くの保育士にとって働き続けることができない環境であることを指摘し、改善を求めました。
コロナ禍の暮らしを支えるエッセンシャルワーカーの皆さまから、休日も安心して預けられる環境を求む声を伺い、多様な保育ニーズに対応するため休日保育の拡充を求め、令和4年度から民間保育所2か所が新たに加わり、市内9カ所の保育所で実施されることとなりました。
EV普及のため集合住宅駐車場に充電設備を!
総会質疑[3月22日] 井上 麻衣(城南区)
本市は国よりも10年早い「2040年度温室効果ガス排出量実質ゼロ」をめざしています。その実現に向け、中でも市内のCO2排出量の約32%を占める自動車対策として、電気自動車の普及推進について質しました。集合住宅の割合が高い本市の特徴に着目し、マンションの新築時に充電設備付きの駐車場設置を要件にするなど、特に集合住宅への電気自動車普及対策の実施を求めました。CO2の吸収源として重要な森林について、スギやヒノキといった針葉樹が広葉樹に比べ炭素吸収量が多く、樹齢も高齢になるほど吸収量が下がるというデータを提示。40年以上の高齢の樹木が8割を占める本市の森林においては、樹種や樹齢に着目した施策、計画の必要性を指摘しました。
コロナ禍の傷みを踏まえ次代を見据えて!
討論[3月25日] 近藤 里美(南区)
令和4年度の予算審議にあたり、会派が主張する「福岡市のめざすべき都市像」について、①生活保障(一人ひとりの命と幸せを大切にする社会)、②成長(人と技術の結びつきが新たな価値を生み出す創造都市)、③地域主権(市民が自ら発言し議論し決定する仕組みづくり)、④共生(一人ひとりの生命と尊厳を守り誰もが安心できる共生社会)という4つの視点から様々な政策提案を行ないました。
来年度は平成24年の福岡市基本計画策定から10年を迎えます。コロナ禍で傷んだ経済や暮らしへの対応をはじめ、脱炭素化や新たな交通政策などの長期的な視野で取り組むべき重要課題も踏まえた、新たな福岡市の姿や目標を示す基本計画の策定を求めました。